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#15:癌治療について~新病院の医療機能・その2「癌治療センター」機能~

 この文章は平成17年7月に、病院広報誌第3号の巻頭言に書いた文章です。
 日本の癌治療についての現状での問題点、今まで当院でも行い得なかった癌治療のスタイル、そして、これらの問題を克服して今後進めていきたい当院での癌治療方向性や実現に対する熱意等について書きました。

癌治療について
~新病院の医療機能・その2「癌治療センター」機能~

          院長 加藤奨一

 新病院で新たに提供していく医療機能は、

1.「救急センター」機能
2.「画像診断センター」機能
3.「癌治療センター」機能
4.「手術センター」機能
5.「循環器病・呼吸器病・糖尿病センター」機能

の5つに集約されますが、今回は癌治療についてお話しします。

 日本の癌治療について、その後進性が最近さかんに取り上げられています。
1)患者さんやご家族が癌治療について一般的なこと、標準的なことを知りたくても、そのような情報を得る手段が日本にはまだあまり用意されていないこと、
2)癌治療には、手術だけでなく、放射線治療や化学療法(抗癌剤治療)等多くの選択肢があるにもかかわらず、日本では今も手術が第一に考えられ、他の治療法は手術が出来なかった時の、まるで“敗戦処理”のような扱いを受けていること、
3)化学療法を専門とする内科医である「臨床腫瘍医」がまだ日本にはほとんどおらず、外科医が手術の“副業”的に化学療法をやっていること、
4)世界で標準的に使われている抗癌剤が日本ではなかなか保健適応されず、簡単に使用できないこと、
5)放射線治療医が足りないこと、
6)がん治療を、臨床腫瘍医、放射線治療医、外科医、病理医、腫瘍看護師、ソーシャルワーカー等のチーム医療としてやっていくシステムがほとんどないこと、
等です。

 上記のようなマスコミが取り上げる問題を全く鵜呑みにはできませんが、当たっていることも多々あります。そして、私は、日本の癌治療専門施設には、手術、化学療法、放射線治療等の積極的治療ができる時期は患者さんを診てくれるのに、終末期までは面倒を見てくれないところが多いことも問題だと思っています。
 また、私が当院の外科病棟でよく感じていたことがあります。末期癌で緩和医療を受けている患者さんの隣に、これから癌の手術を受けようという元気な患者さんが入院していることなど日本の病院では日常茶飯事です。「外科病棟」は、診療のスピード等が末期癌の患者さんにはマッチしません。緩和医療は緩和医療に適した治療の場で行われるべきだといつも感じていました。

 当院の目指す「癌治療専門病院」は、健診による癌の早期発見から、手術・化学療法・放射線治療といった積極的な癌治療、そして、緩和医療をもシームレスに行う「癌の“トータル・ケア”施設」です。

こうした癌治療に対する当院の理念を実現しようと、新病院では数々の新たな施設や仕組みを作りました。

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