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#41:医療に関するテレビ番組と消費税増税

この文章は平成24年10月に発行された病院広報誌31号に書いた文章です。

医療に関するテレビ番組と消費税増税

院長 加藤奨一

先日テレビを見ていてふとこんなことを思いました。

テレビでよく放映されている医療関係の番組と言えば、到底治らないだろうという病気が奇跡的に治った高度医療の話や、いわゆる"スーパー・ドクター"ネタが多いのですが、先日私が見たのは、ある難病に対してまだ公的補助制度がないので、ぜひ早くそうした制度を確立すべきだ、という内容の番組でした。

高度医療の報道を見るとき私たちは「すばらしい治療法があるものだ!」とただただ感動するわけですが、難病に対する医療費補助制度の報道を見る時も私たちはただ「国は早くこうした難病患者に公費負担制度を作るべきだ」と思うだけで、それに対する経済的問題には頭が回りません。おそらくテレビ局もこうした視聴者の感情を煽って視聴率を取りにいっているのだろうと思いますが、こうした番組はそこで終わらず、高度医療の話ならば最後には必ず「この治療法にはいくらお金がかかり、それを公的医療保険でまかなった場合は税金をいくら投入しなければいけないのか?そのためには、税収入をいくら増やせば実現できるのか?」という視点を盛り込むことが必要だと思いました。難病に対する公的補助制度も同じです。対応の遅い政府を責めてばかりいるのではなく、「公的補助制度を作るにはいくらお金がかかり、税金をいくら投入しなければいけないのか?そのためには、税収入をいくら増やせば実現できるのか?」という視点を盛り込むことが必要ではないか、と先日思ったのです。

新聞、テレビで消費税増税の是非について盛んに報道されている昨今ですが、消費税増税ということを単体で議論しないで、こうした高度医療の普及や難病に対する公的補助制度の是非と消費税増税の是非とをリンクさせて報道したらいかがなものでしょう。

誰だって税負担が増えることは嫌です。しかし、同じように、現代医学が提供できる医療の恩恵を貧富の差なく合理的な自己負担の範囲で受けられることも国民皆が望んでいることではないでしょうか。

小泉政権時代、過剰な医療費抑制策がとられ「医療崩壊」を招きました。医療費抑制は国民にとっては受けられる医療が抑制されることと同義であることを理解していない人が多いようです。こうしたことを医療従事者はよく知っていますが、医療従事者が医療費抑制に反対すると必ず「自己権益の保全」のようにとられるため、日本医師会からの発言などもなかなか世間からは好意的に受け取られません。

幸いにも消費税増税がやっと決まりましたが、まだ反対している政治家がいます。私には全く信じられないことです。元々ない財源を、少しずつこっちからあっちへ、あっちからこっちへと動かしているだけでは、医療を含む日本の社会保障がもう立ちゆかないことは明らかです。

医療に関して言えば、「税金はあまりとられないけど、いざ病気になったとき面倒をろくに見てくれない」国がいいのか、「税金はたくさんとられるけど、いざ病気になったときもきちんと面倒を見てくれる」国がいいのか?答えは明白だと思います。

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