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#42:「冷淡・軽税国家」か「親切・重税国家」か?

この文章は平成25年1月に発行された病院広報誌32号に書いた文章です。

「冷淡・軽税国家」か「親切・重税国家」か?

院長 加藤奨一

この原稿を書いているのは、12月16日に予定されている衆議院議員総選挙1週間前の12月9日です。皆さんがこの文章を読まれる時は、総選挙の結果は確定し、政権与党は決まっています。

今回の総選挙には、3年間の民主党政治に対する国民の評価が下される審判の意味があるわけですが、連日のテレビ、新聞での報道内容を見ると、どうもメディアが今回の総選挙での争点にしたがっているのは、消費税増税、TPP、脱原発というテーマのようです。3年前の総選挙で争点になっていた社会保障や医療に関する議論はあまり大きく取り上げられていないように感じます。この広報誌のオピニオンでも再三にわたって私が書いてきた社会保障、特に医療に関する財源確保の問題もあまり取り上げられていません。

前回もこのコーナーで書き、繰り返しになり大変恐縮ですが、小泉政権時代、財源がないことを理由に過剰な医療費抑制策がとられ「医療崩壊」を招きました。病院から勤務医がどんどん減少し、特に、地方の医療が崩壊しました。

医療費抑制は、病院や医療従事者の収入が減少することよりも、国民が受けられる医療そのものが抑制されることが問題です。3年前日本医師会は自民党から民主党への政権交代に協力し、民主党への政権交代を契機に医療費抑制に少し歯止めがかかり、医療崩壊の進行速度が遅くなりました。この点は民主党政治の唯一(?)の善政だったと思います。そういうことをメディアは報道していませんので、国民はその点をよく理解していないだろうと思います。

選挙前の各党の討論で、まだムダをなくせば消費税増税をしなくていい、と主張している政党があります。私にはどうしても理解できません。消費税1%増税に付き約2.5兆円の財源確保が可能なのに対し、ムダ削減では何百億円、多く見積もっても何千億円しか財源確保はできません。その効果は消費税増税に比べ何百分、せいぜい何十分の一しかありません。1,000兆円の国の借金を減らすことが不可能なのは明らかですし、これからも進む超高齢化社会で増えていく医療需要をまかなうこともできません。

「税金はあまりとられないけど、いざ病気になったとき面倒をろくに見てくれない」国がいいのか、「税金はたくさんとられるけど、いざ病気になったときもきちんと面倒を見てくれる」国がいいのか?国民はよく考えるべきだ、と前回もこのコーナーに書きましたが、ある論客がいいことを言っていました。国の形は「冷淡・軽税国家」か「親切・重税国家」しかあり得ない、との表現です。少子高齢化社会をストップできない限り、日本の今後進むべき道は「親切・重税国家」しかあり得ないと考えるのは私だけでしょうか?

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