診療科案内 -呼吸器内科-

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解説

肺は人体の中で最も外気に接する機会の多い内臓であり、常に換気を行っているがゆえに取り込む目的の酸素と同時に目的以外の大気汚染物質や発癌物質、時には病原微生物等を取り込んでしまい肺の病気になってしまうことになります。つまり呼吸器疾患とは患者さんの過ごす環境に大きく左右されるところにその特徴があります。当科で診療を行っている呼吸器疾患のいくつかについて説明致します。

肺癌 と バイオマーカー

当科は肺癌診療を行っており癌診療拠点病院としての一翼を担っています。がんは遺伝子の病気でありさらに近年は免疫的側面も癌診療に応用されつつあります。従来は病理診断で非小細胞肺癌と小細胞肺癌に分けて治療戦略が練られてきました。しかしその後非小細胞肺癌はさらに肺腺癌と肺扁平上皮癌に分けることが必要となり、腺癌についてドライバ-変異などの遺伝子解析結果が最も実臨床に生かされています。

肺腺癌に対する分子標的薬は内服薬であり患者さんのご希望が多い薬ですが、この薬に関しては効果のある方と奏効が期待できない方がはっきりと分かれます。その指標となるのがバイオマーカーです。すなわちEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子が陽性の方はそれらに対応する内服薬によって肺癌治療が可能です。

肺癌は全世界的にみても難治がんの1つであり、基礎研究者を中心とする世界中の英知がその治癒のために結集されてきました。その結果2016年ごろから本邦においても肺癌に対する免疫療法が実用可能となっており、当院でも実施可能です。免疫療法に対するバイオマ-カーとしては現在のところPD-L1がありますが、陰性の方でも効果がある場合があり、さらに明確なバイオマーカーを求めて研究が継続されています。そう遠くない将来に真のバイオマーカーが発見されることでしょう。

免疫慮法は肺腺癌にも有効ですが、従来の化学療法以外治療法に乏しかった肺扁平上皮がんの方にも有効性が認められ、投与中止後も長く持続する制癌効果があるという特徴を持ち、分子標的薬一辺倒であった肺癌治療の一時代に区切りをつけた画期的な薬です。irAE(免疫関連有害事象)と呼ばれる様々な全身性の副作用には注意が必要ですが、今後の免疫療法の進歩はすでに手術ができない肺癌の患者様への福音となることでしょう。

小細胞肺癌やさらに希少な組織型の肺癌に対する新しい治療薬の開発が待たれますが、その他にも肺癌の病因(タバコもその一つですが)というものが解明され、病因の根絶・回避とともにこの病気が地上から消え去る日がきっと来ることを願っています。

間質性肺炎 と 時間

間質性肺炎(肺繊維症)は通常の細菌性肺炎などと異なり、一般に感染が原因とはされない、慢性的な肺炎であり、しばしば長期間の病状経過と進行性の自然経過をもっています。その進行のスピートは個々に違いますが、薬剤によるDI-ILDなど、急激に進行する間質性肺炎もあり、抗癌剤による治療中などに起きることがあります。

一方比較的末梢気道への抗原感作によっておこるとされる鳥飼病や各種慢性過敏性肺炎でも両肺の間質性肺炎像を呈します。また膠原病に合併する間質性肺炎も有名です。これらの原因が特定できる間質性肺炎は原因の回避や、ある程度の原因療法が可能ですが、現在の医学では原因の特定できないIPF(特発性間質性肺炎)の患者さんも多く、難病に指定されています。当科ではIPFの難病申請が可能です。またIPFに対する薬剤としては現在2種類の抗線維化薬があり、当科でも処方可能です。

1回の受診で「今現在、CT所見で間質性肺炎がありますが、SpO2も96%と保たれており、心配ないでしょう。」・・と説明しますと、自覚症状が軽微な段階ではまったく病気についてお忘れになる方がいらっしゃいますが、その後も時間とともに間質性肺炎は進行(悪化)していくことになります。当科では「間質性肺炎は治りません」と突き放すことは致しません。間質性肺炎は進行性の病気ですが、重症度に応じてできるだけ悪化を防ぐことが治療の目的と考えています。

喘息 と 救急受診

吸入ステロイド薬(ICS)による治療が普及し、喘息患者様の重積発作等がよく管理されるようになったことから、夜間救急を不意に受診される方は減少しています。しかし吸入ステロイド薬や長時間作用型β刺激薬(LABA)との合剤(ICS/LABA)によっても安定しない症例では抗体薬による治療(注射)も当科で行っています。いずれにしても喘息の慢性気道炎症を治療し、気道リモデリング(気管支が拡張しなくなり固まってしまうこと)を防ぎ、喘息発作を予防するためには安定期であってもICSやICS/LABA等の定期吸入治療継続が必要です。

最近、薬物療法に反応しない重症喘息の方に対する気管支サーモプラスティが本邦でも保険適応となっていますが、この治療をご希望の患者様につきましては大学病院等をご紹介致します。

COPD と タバコ

喫煙が原因の呼吸器疾患は多数ありますが、COPD(慢性閉塞性肺疾患、肺気腫)はその代表格です。COPDの進行を食い止める為には何よりも禁煙が大事です。各種吸入薬で治療を行いますが重症例には在宅酸素療法を導入致します。喫煙という作為が原因であるため、喫煙という行為が持続される限り、もともとその方が持っているどんな病気にもCOPDが合併しうることは感染症の場合と同様ですが、診断されていない病気としても夙に有名です。診断されていないという意味は、患者さん自身がこのご病気を認識されていないうちに進行している状態であると思います。このような患者様は多数お見受けしますので、COPDという病気の原因とは何かをまず考えて頂くことが重要です。

結核 と 非結核性抗酸菌症

かつて国民病として恐れられた結核で命をなくす若者は減りましたが、現在では高齢者結核と外国人のかたの(耐性)結核等が問題となっています。

日本はいまだ結核の中蔓延国であり、この病気は他の細菌性肺炎などの呼吸器疾患に紛れ込んだ伏兵のように公衆の衛生にとって脅威となっています。当科では結核の早期診断に努め、結核病棟を備えた専門病院への円滑なご紹介に努めています。

結核類似の感染症であるNTM(非結核性抗酸菌症、MAC)は結核の有病率を超えて増加しつづけており、喫緊の問題となっています。一般には水回りなどの環境からの感染症で、結核と異なりヒト-ヒト感染は起こらない、と考えられており(特殊な菌種以外は)、当科としましては生活環境の改善と口腔からの菌侵入防止策について提案させて頂き、血痰や画像所見の悪化ある方につきましては3剤による治療介入を行っています。

呼吸 と 睡眠

当科ではご自宅での簡易モニターによるスクリーニング検査と1泊入院でのポリソムノグラフィーを使った精査、による睡眠時無呼吸症候群の診断が可能です。

AHI=Apnea Hypoapnea Indexとは睡眠中1時間当たりの無呼吸あるいは低呼吸を示す指標でAHI≧5のとき睡眠呼吸障害がある所見とします。5≦AHI<15 を軽症、とし15≦AHI<30を中等症、AHI≧30は重症と診断します。

検査結果にて閉塞型睡眠時無呼吸の所見あり、導入の適応ありましたらCPAPによる治療をおすすめしています。

診断 と リスク回避

診断とはいつも困難なものです。呼吸器内科の初診時に咳嗽を主訴に受診される方は多く、始まりはいつも咳ですが、その原因は実に様々であり、治療法も個々に異なります。時には診断がつくまで経過を追う必要があります。しかしそのような苦難の道である診断こそが内科医の矜持でもあります。早期の診断は疾患の予後を好転させる端緒となりえるからです。出会った患者さんの運命を変えられる呼吸器内科医でありたいと願っています。

(文責:呼吸器内科部長 大野善太郎)

医師紹介(常勤医)

<氏  名>
大野 善太郎(おおの ぜんたろう)
<出身大学>
福島県立医科大学医学部 平成10年卒
<略  歴>
平成29年4月:友愛記念病院呼吸器内科部長 就任
<資  格>
  • 日本内科学会内科認定医・専門医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
  • 日本がん治療認定医がん治療認定医
  • 日本結核病学会 結核・抗酸菌症認定医
  • 厚生労働省緩和ケア研修会終了
  • 厚生労働省臨床研修指導者講習会終了
  • J-STOP禁煙治療指導者トレーニング終了

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