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#20:医療崩壊~勤務医達の撤退~

 この文章は平成19年1月に、病院広報誌第9号のオピニオンに書いた文章です。
 日本の「医療崩壊」の原因を、医師の立場から吐露した文章を紹介しました。

医療崩壊~勤務医達の撤退~

          院長 加藤奨一

 今回は、日本の「医療崩壊」がどうして起こっているのか、その理由を端的に記述した文章を紹介します。ある勤務医が書いた文章ですが、現在日本中で勤務医が不足し、そうした状況がどんどん進行している理由をご理解いただけるのではないかと思います。

寒々とした不毛の国へ猛進 医者はサッサと辞めていく。

 マスコミは嬉しそうに医者叩きをしています。それに煽られた世論も医者を叩く事は正義だと喜んでいます。司法も世論に乗っかって医者を断罪して狂喜乱舞しています。経済諮問会議も医療費は国の財政の厄介者だとして敵視しています。いくら叩いてもろくに反論されない医者叩きはすごく楽しかったと思います。

 しかし医者の忍耐も無限ではありません。忍耐が限界に達したらどうするか、当然反発します。給与、待遇、勤務環境、訴訟問題などなど改善要求はヤマほどあります。これを団結して要求したなら初めて協議の場がもてます。これは医者だけではなくどんな職場でも当てはまる事です。ところが医者は表立って要求もせず協議をしないのです。サッサと辞めていくのです。

 医者が辞めたらどうなるか、従来ならば病院は辞めた医者の補充を医局に要求し、補充人員が来れば何事もなく終わっていました。ところが新研修医制度と医局潰しに熱中したお蔭で、医局にも医者は乏しく、病院の要求には応えられなくなっています。医局に残っている医者も勤務条件の悪い病院への就職を拒みます。つまり医者に辞められた病院は欠員を埋める事が出来ず、診療科の縮小、病棟閉鎖、ついには閉院にもつながっていきます。

 自治体病院などでは慌てて、議会で医療の充実の決議などをし、首長が医者の後釜を探すとか声明を出しますが、いったん医者に去られた病院には医者は寄り付きません。(略)

 こういった医者の行動に医者仲間は非難も反発もする様子はありません。医者であるだけに職場環境の苛酷さは熟知しており、そんなところで働けとはとても言えないからです。 もし言おうものなら「アンタが行け」と反論されますし、反論をなだめる術は無いからです。それぐらい現場の環境は厳しいと言う事です。

 まさに静かなる崩壊です。誰も止める人も無く、止めようとする人も無い崩壊です。医者はどんなに叩き、締め上げても黙って仕事をすると、世間の人は無邪気に信じ込んでいるようですが、静かにかつ急速に崩壊しています。あなたの街の病院はまだ大丈夫ですか。もし診療科の一時閉鎖とか縮小なんてお知らせがあれば、もうその病院の崩壊はかなり進んでいると思ったら良いと思います。

 医者の医療危機への対応は、静かに去って、崩壊させ、社会問題にすると考えたらよいかと思います。あれだけ団結力の無い医者が、申し合わせたように一致して行動する姿は不気味なほどです。そこまで医療危機は深刻化しています。

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