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#33:菅新首相に期待すること

 この文章は平成22年9月に発行された病院広報誌23号に書いた文章です。

菅新首相に期待すること

          院長 加藤奨一

この原稿を書いている6月4日、菅直人氏が民主党の新代表に選ばれ、それに引き続き第94代首相にも選出されました。

昨年9月、自民党から民主党への政権交代がなされ、わずか8ヶ月半で鳩山由紀夫首相は辞任に追い込まれました。民主党新政権に対する国民の期待が大きかっただけに、その後の体たらくに対する失望も大きかったのだと思います。

民主党に政権が変わって、医療界にはどんな影響があったでしょうか。医療界に追い風になったのでしょうか、向かい風になったのでしょうか。今年4月に行われた診療報酬改定に関して言えば、病院にとっては多少追い風、診療所にとっては向かい風の改定だったのではないでしょうか。その前の8年間ずっと虐げられてきた病院にとっては、病院医療をやっと少し見直してもらえた、というのが感想です。

さて、菅新首相となった場合、医療界にはどのような影響があるのでしょうか。私は、ひとつだけ期待感を持って眺めたいことがあります。

以前、菅さんが何かに書いているのを読んだことがあるのですが、医療・介護・福祉への財政支援を増やし、その供給量を増加させると、国民が病気になったときや老後に安心感を持てるだけでなく、そうした分野への雇用が拡大し、景気もよくなる、との理論です。他の経済学者でもそうした理論を言っている方がいます。もちろん、そうした理論に疑問を抱く経済学者もいます。

もう10年以上前から、医療は国家財政の厄介者扱いを受けていました。医療は何か形のあるものを生み出す分野ではないため、医療費は何も生み出さない無駄な財政支出と考えられ、少子高齢化により毎年医療費が増えていくことは国を滅ぼすとまで言われました。

こうした考え方から、医療費の増加を抑制する様々な施策が取られました。ここに医療に対する安全・安心への希求も加わり、病院や勤務医へ真綿で首を絞めるような、様々な医療政策、医療制度が生まれてきたわけです。その結果ついに数年前から“医療崩壊”が白日の下にさらされるようになったことは皆さんも感じていられることだと思います。

ですから、医療・介護・福祉への財政支援を増やし、その供給量を増加させると、国民が病気になったときや老後に安心感を持てるだけでなく、そうした分野への雇用が拡大し、景気もよくなる、との菅理論には非常に期待するわけです。私もその通りだと思います。

病気になったとき、歳をとったとき、いざというとき自分で身を守らなければいけないので、国民はお金を使いません、消費をしません。ものが売れないわけです。反対に、いざというとき、国家が面倒をちゃんとみてくれるなら、そんなに貯蓄をする必要もないので、人生を楽しむために国民はお金を使うでしょう。当然、ものも売れるようになり、企業の収益も改善し、従業員の給料も上がり、さらに消費も増えるという正のスパイラルが生まれます。

菅新首相にはぜひこの経済理論を実践してもらいたいと思います。そうすれば今の“医療崩壊”も終息に向かい動き出すのではないでしょうか。

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