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#35:ピンチをチャンスに~東日本大震災~

この文章は平成23年4月に発行された病院広報誌25号に書いた文章です。

"ピンチをチャンスに~東日本大震災~

院長 加藤奨一

3月11日、14時26分三陸沖(牡鹿半島の東南東、約130km付近)、深さ約24kmを震源地とするマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が起こりました。江戸時代から通算して日本では400年に一度くらいの大地震で、世界的に見ても最大規模の地震だということです。高さ15mとも20mとも言われる大津波が太平洋岸を襲い。町ごと津波にのまれたところもありました。この原稿を書いている3月26日時点で、死者は1万人を越え、行方不明者も1万7千人を越えています。さらに情報が収集されると、犠牲者は3万人を越えるかもしれません。

また、今回の地震では福島第1原子力発電所が津波に襲われ、電源系統が破壊されるという原発事故も起こりました。世界中がその推移に注目していますが、原発問題はまだ全く先が見えません。

被災地だけでなく東京電力管内では電力不足に陥り、初めての「計画停電」という措置がとられています。4月一杯で「計画停電」は一時中止される見込みですが、真夏の冷房シーズンには電力需要が供給を上回るため、また「計画停電」が実施される見通しです。 物資不足に物流の麻痺も加わり、危機感を煽られた消費者が特定の品物を競って買いあさるという事態も起きています。一時ガソリンスタンドにも長蛇の列ができていました。 工場の操業停止などの企業活動の縮小が続いており、各種会合、イベントはことごとく中止となりました。日本経済に与える影響は甚大なものがあるのではないでしょうか。 こうした被害は医療施設や介護施設にも及んでいます。建物の倒壊、インフラの麻痺で機能停止に陥った施設も多数あります。こうした状況の中で、我が友愛記念病院が受けた被害は最小限のものでした。患者さんや職員に怪我人は皆無でしたし、建物でも壁紙や壁に亀裂が入った箇所が多数あっただけでした。また、新病院設立のコンセプトとして「電気と水の途絶えない病院」をかかげ、大容量の自家発電機2機と井水浄化システムを設置していたため、多少の医療機能縮小はあるものの、ほぼ平常時と同様の診療を行うことが可能でした。ただ、もっともっと医療機能を通常に近づけるためには、非常電源の分配等には再考が必要であることも分かりました。真夏の「計画停電」に備え、早々に非常電源の分配を再構築する予定です。

今回の震災は「国難」です。被災者の方々の心情を考えると、石原都知事の「天罰」発言はいただけませんが、近年日本の社会や世相には問題が山積しています。「平和ぼけ」して、国のことや他人のことを考えなくなった国民も多くなりました。「義務」は遂行せず「権利」ばかり主張する国民も多くなりました。自分だけよければいいと、他人を思いやる気持ちも昔より薄くなっているように感じます。国民の倫理感、道徳観もかなり荒廃しつつあります。今回のこの「国難」を、「日本の国民、社会はそろそろここら辺でよい方向に軌道修正しなさい。」という神様からの啓示と捉え、「ピンチをチャンスに」変えていけたらいいのではないでしょうか。

日本国民ひとりひとりが他人を思いやり「自分のできること」をやり遂げることで、この「国難」も乗り越えられるでしょう。「さすが日本、さすが日本人」と世界から高い評価を得られるような、そんな対応を国全体でやっていきましょう。

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