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#46:「診療報酬改定」と「医療崩壊」

この文章は平成26年1月に発行された病院広報誌36号に書いた文章です。

「診療報酬改定」と「医療崩壊」

院長 加藤 奨一

 日本では1961年に「国民皆保険制度」が始まりました。「国民皆保険制度」とは、全ての国民が何らかの公的医療保険に加入しているということです。公的医療保険は大きく二つに分けられ、一つは会社員が加入する健康保険、公務員の共済保険、船員の船員保険のように、組織に雇用されている人を対象とする「被用者保険」であり、もう一つは、自営業者や被用者保険の退職者などを対象とした「国民健康保険」です。

 被保険者(保険に加入している人)は、毎月保険料を支払いますが、被用者保険の場合は被保険者本人と会社が折半し、国民健康保険の場合は全額本人が支払います。

 皆さんが医療機関を受診した場合、実際にかかった医療費の3割(小学校就学前は2割、70歳以上は収入により1割、または3割)を「自己負担」し、残りの医療費は公的医療保険によってまかなわれ、診療後に医療機関に支払われます。 また、「高額療養費制度」という制度があり、医療機関や薬局で1か月に支払った金額の合計が一定額を超えた場合に、超えた分が公的医療保険から被保険者に支給されます。

 こうした医療費の各々について金額を決めているのが「診療報酬制度」という制度で、2年毎に改定されます。診察代、検査代、入院費、手術代、薬代などの金額を国が決めるという、完全な「公定価格」であるのが「診療報酬制度」です。

 今年4月には「診療報酬改定」が行われます。小泉純一郎元首相が政権をとっていた時代、「聖域なき改革」の御旗の元2回に渡りマイナス改定(診療報酬の減額)が行われ、いわゆる「医療崩壊」を招きました。その後の民主党政権時代には、わずかながら2回プラス改定(診療報酬の増額)が行われ、「医療崩壊」が止まりかけましたが、今回自民党政権は再びマイナス改定を主張しています。せっかく歯止めがかかった「医療崩壊」がまた進んでいくのではないかと医療関係者は皆危惧しています。

 「医療崩壊」が最も如実に表れるのが「地方」です。何年か前に全国で勤務医不足や診療科閉鎖、病院閉院のニュースがたくさん流れていたことを覚えていらっしゃると思います。マイナス改定をすると、数年で同じ事がまた起こります。犠牲になるのが患者さんやご家族です。

 3月までマスコミ報道を注視していて下さい。政治家や官僚は、マイナス改定が必要な理由をもっともらしく並べ立てますので、読者や視聴者は簡単に納得させられるでしょう。「御用記者」が書いた、あたかも病院や医師が自分たちの収入を増やすために医療費の増額を主張しているかのような記事が溢れます。

 「特定秘密保持法案」なども成立しましたし、日本も危ない国です。国のやろうとしていることを国民は細心の注意を持って「監視」し、おかしなことは力を合わせて「糾弾」していかないと、不幸になるのは我々国民です。

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