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#83:医師の「働き方改革」

この文章は2024年4月に発行された病院広報誌73号に書いた文章です。

医師の「働き方改革」

院長 加藤 奨一

2018年6月「働き方改革関連法」が成立し、2019年4月以降、大企業から順次施行されました。中小企業の残業時間の上限規制は2020年4月から、同一労働同一賃金は2021年4月から、月60時間超の残業に対する割増賃金率の引き上げは2023年4月から施行されています。特例として、建設業・運送業・医師に対しては、時間外労働の部分で5年の猶予が与えられていましたが、2024年4月から遂に施行されます。

医師には「36協定」の特例が適用され、病院の機能などに応じて「A・B・C水準」に分類されました。労働基準法に基づく年間時間外労働時間の上限は原則360時間ですが、勤務医については、「A水準」は年間960時間まで、月100時間までの時間外労働が認められます。ただし、高次救急医療施設やがん拠点病院などは「B水準」、地域医療確保のため医師派遣を行う施設は「連携B水準」、臨床研修医、専門研修医の雇用施設は「C-1水準」、特定高度技能研修者の雇用施設は「C-2水準」として、都道府県から特別な指定を受けることができます。年間時間外労働の上限は、B・C水準では1,860時間となっており、c-2水準は希望する医師が「高度特定技能育成計画」を策定し、それを元に医療機関が第三者機関の審査・承認を受けます。ただし、B水準は2035年度末までに段階的に解消し960時間に、C水準は縮減することが求められています。最終的には全施設でA水準を満たす必要があるということです。ちなみに、茨城県の病院でA水準以外を申請したのは4病院のみでした。
また、月100時間以上の時間外労働が見込まれる医師に対しては面接指導が義務づけられ、連続勤務時間上限は28時間(臨床研修医は15時間)、勤務間インターバル下限は9時間がセットで義務づけられます。

先日「医師の働き方改革」施行後の病院の対応について茨城県内の主要病院での会議がありましたが、大半の病院で「通常医療か救急医療のどちらかを縮小せざるを得ない」と考えていることが分かりました。元々日本の医療は勤務医の過重労働でなんとか維持されてきたので、勤務医の過重労働がなくなれば、必然的に医療提供体制は縮小します。病院を昼間受診するのが難しくなったり、夜間の救急車受け入れが困難になったりします。マスメディアは建設業や運送業について盛んに報道していますが、「区師の働き改革」が区療提供体制に及ぼす影響についてはあまり報道していません。国民に周知されていないことで4月以降に起こるであろう混乱が心配です。

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